トレーラーハウスを農地に設置!メリットや必要な手続き、注意点を解説
近年では、倉庫や受付、トイレ、休憩所、または農泊用の宿泊施設として、農地にトレーラーハウスの設置を検討している農業者の方が増えてきています。農地にトレーラーハウスを設置する場合、気を付けるべきポイントは「農地は農地法により保護されており、自由にトレーラーハウスを設置できるわけではない」という点です。
今回は、法令上クリアな方法で、トレーラーハウスを農地に設置するためのポイントについて詳しく解説していきます。
Contents
トレーラーハウスとは
トレーラーハウスとは、車輪がついており、自動車によってけん引される移動可能な住居のことをいいます。一般的にトレーラーハウスは、通常の住宅と同様の機能を持ちながら、建築基準法において建築物として扱われない点が大きな特徴です。
このため、固定資産税がかからず、経済的なメリットが多いです。トレーラーハウスは、住宅としての利用だけでなく、オフィス、休憩所、店舗など多目的に活用できます。
設置場所に関しても柔軟で、通常の建築物が建てられない場所(市街化調整区域等)にも設置可能です。ただし、設置には法的な規制や注意点もあり、誰でも無条件・簡単に設置ができるわけではないことに注意しましょう。
市街化調整区域にトレーラーハウスを設置する際の注意点については、下記の記事をご確認ください。
市街化調整区域でも家を建てられる?例外や活用事例を紹介
「市街化調整区域でも家を建てられないのか?」このような疑問を抱く方は多いでしょう。確かにその通りですが、中には例外も存在します。今回のコラムで詳しく解説していくので、興味があればぜひご覧ください。
トレーラーハウスは農地に設置できる?
結論、トレーラーハウスは農地に設置することが可能な場合もありますし、そうでない場合もあります。農地は農地法により保護されているため、車両として扱われるトレーラーハウスを設置するには、農地を駐車場の用途として利用する目的で、「農地転用」の手続きを経る必要があります。
そもそも、農地とは農地法第2条第1項より「耕作の目的に供される土地」のことを指します。簡単に言い換えれば「農作物を育てるための土地」のことです。農地法は、農地の保護を目的に、転用や売買についてを規制するためのもので、農地の使用用途に関しての制限を設けています。
そのため、農地にトレーラーハウスを設置する際にも、自由に設置ができるわけではなく、農地の立地基準に基づいて必要な手続きを経る必要があるということです。
また、基本的にトレーラーハウスは建築物ではなく車両として扱われるため、車両として認められるためには、下記の点を必ずクリアする必要があることも押さえておきましょう。
常時移動可能
建築基準法に基づき、トレーラーハウスが建築物とみなされないようにするために、常時移動可能な状態を維持する必要があります。具体的には、車輪が取り外されていないことや、ライフラインの接続が工具を使用せずに着脱できることが条件です。
サイズと重量が一定
道路運送車両法の規定により、トレーラーハウスは一定のサイズと重量を超えないようにし、適法に公道を走行できる状態でなければなりません。保安基準第2条に基づいて、全長12m、全幅2.5m、全高3.8m以内に収まっていることで車検が取れます。この場合は、特別な手続きなしで、公道を走ることが可能です。
農地転用許可の手続きについて
上述したように、トレーラーハウスを農地に設置するには、駐車場としての「農地転用許可」を得る必要があります。農地転用許可は、農地を農業以外の用途に利用するために必要な手続きです。
農地法に基づき、農地転用許可を得るには以下のステップを踏む必要があります。
- 農地の区分(立地基準)を確認する
- 一般基準を確認する
- 転用申請書を作る
- 管轄の農業委員会に提出する
- 農業委員会から通知が届く
- 管理が必要である
- 専門家のサポートを受ける
農地の区分(立地基準)を確認する
まず、転用を希望する農地がどの区分に属するかを特定する必要があります。農地の区分によって、転用の難易度や条件に違いがあり、市街化区域は市街化を推進する区域のため比較的転用のハードルが低めですが、市街化調整区域は市街化を抑制する区域のため転用のハードルが高めです。
詳しくは下記の立地基準一覧ご確認ください(参考:愛知県「農地法第4条及び第5条の許可に係る 審査基準 」 )。
農用地区域内にある農地
農振法に基づく農振計画において農用地として利用すべき土地として定められた区域内にある農地のことです。原則、農地転用は不許可となりますが、土地収用法第26条第1項の規定による告示があった事業及び一時転用の場合は許可となります。
甲種農地
高性能農業機械による営農に適した農地及び土地改良事業完了後8年未満の農地のことです。原則、農地転用は不許可となりますが、公益性の高い事業に供する場合等は許可となります。
第1種農地
集団的に存在する農地その他良好な営農条件を備えている農地のことです。原則、農地転用は不許可となりますが、公益性の高い事業に供する場合等は許可となります。
第2種農地
市街地等に近接する区域、その他市街地化の見込まれる区域内にある農地のことです。周辺の他の土地により事業が達成できない場合は、農地転用は許可となります。
第3種農地
市街地の区域内又は市街化の傾向が著しい区域内にある農地のことです。原則、農地転用は許可となります。
自身の所有する農地がどの区分に属するかは、対象地を管轄している農業委員会事務局に問い合わせることで確認できます。また、基本的には第2種または第3種農地でなければ、農地転用許可を得ることが難しいですが、例外的に認められる条件も存在しているため、行政書士などの専門家に頼ったうえで、農業委員会に問い合わせてみましょう。
一般基準を確認する
農地転用の可否を確認する際には、上述した立地基準の他に一般基準を満たしているかどうかも重要になります。一般基準には下記の3つがあります(参考:愛知県「農地法第4条及び第5条の許可に係る 審査基準 」 )。
農地を転用して申請に係る用途に供することが確実と認められない場合
簡易な言い方にすると、転用事業が確実に行われること、またその資力を有していることを証明する必要があります。認められない場合、転用は不許可となります。
例えば、駐車場に農地を転用する申請を出す場合、そのために必要な工事を実施する為の資金を有しており、転用の妨げとなる権利者からの同意を得ているなどの条件を満たしている必要があります。
周辺の農地に係る営農条件に支障を生ずるおそれがあると認められる場合
これは当たり前の話ではありますが、周辺の農地に悪影響を及ぼす場合は転用は認められないという基準です。
例えば、農地を駐車場の転用したことで、雨水が他の所有者の農地に流れこみ悪影響を及ぼす等の場合、農地転用は認められません。
地域における農地の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に支障を生ずるおそれがあると認められる場合
農業経営基盤強化促進法で規定される地域計画に支障を及ぼすような農地の転用も認められません。
これらの基準に違反していないか、農地転用の許可を得たい場合はチェックしておきましょう。
農地転用許可申請書を作る
次に、農地転用許可申請書を作成します。この書類には、転用の目的、転用後の利用計画、資金計画などを詳細に記載する必要があります。また、転用する農地の現況や周辺の農地への影響についても説明することが必要です。
農地転用の届出書や書き方については、それぞれの自治体のHPに掲載されている場合が多いため、農地所在地の自治体を確認してください。
また、市街化区域内の場合は農地転用届出、市街化調整区域内の場合は農地転用許可申請が必要となります。提出する書類が異なるため、これについても注意が必要です。
※市街化区域などの区域区分は、農地法ではなく都市計画法により定められています。農地法で定められる区域区分とは異なります。
自らの農地が市街化調整区域に該当しているかについても、各々の自治体HPで確認できる場合が多いです。「○○市 都市計画図」のような形で検索することで確認できるため、チェックしてみてください。
管轄の農業委員会に提出する
申請書が完成したら、管轄の農業委員会に提出します。農業委員会は申請内容を審査し、必要に応じて現地調査を行います。
審査のポイントは、転用後の利用計画が合理的かどうか、転用が周辺農地に与える影響が最小限であるか、申請者の資金計画が確実であるかなどです。
農業委員会から通知が届く
審査が完了すると、農業委員会から許可または不許可の通知が届きます。農地転用許可申請の場合は、農業委員会を経由して都道府県知事の許可を得る必要があります。
ある程度時間のかかる手続きとなるため、事前に余裕を持って計画を進めることが重要です。
専門家のサポートも検討する
農地転用許可の手続きは複雑で多岐にわたるため、専門家のサポートを受けることをおすすめします。
市街化区域内であれば、農地転用届出で済むため一般の方でも手続きをすることができると言われていますが、市街化調整区域内の農地は許可申請が必要となるため、費用は掛かりますが、専門家に依頼する方が無難と言えるでしょう。農業委員会や都道府県の担当窓口、行政書士などに相談することで、手続きの流れをスムーズに進めることができます。
農地にトレーラーハウスを設置するメリット
農地にトレーラーハウスを設置するメリットは以下の通りです。
- コストを低減できる
- 住宅よりも税負担が軽い
- 環境を保護できる
- 設置が簡単である
コストを低減できる
土地から新規で購入する場合、農地は住宅用地に比べて価格が低いため、初期費用を大幅に抑えられます。さらに、トレーラーハウス自体も建築費用の面ではコストパフォーマンスが高いです。経済的な負担が軽減され、土地購入と住居設置がより手軽になります。
住宅よりも税負担が軽い
トレーラーハウスは建築物として扱われないため、固定資産税が課されず、長期的な税負担が軽減されます。もちろん自動車税とは必要になりますが、それでも十分にメリットがあると考えられます。
環境を保護できる
トレーラーハウスは従来の建築物に比べて環境負荷が低いです。建設時に発生する廃棄物が少なく、必要な資源も少量で済むため、環境に優しい選択肢と言えるでしょう。
設置が簡単である
トレーラーハウスは設置が簡単で、建築許可を必要としない場合が多いため、手続きが簡素化されます。農地転用の許可を得る必要はありますが、それでも農地に建築物を建てる場合と比較して手続きが迅速に進められます。
また、必要に応じて移動や撤去が容易であり、状況に応じた柔軟な対応が可能です。
トレーラーハウス設置の注意点3選
農地にトレーラーハウスを設置する場合、農業委員会への届出・申請以外に、下記の点にも注意が必要です。
- 運搬道路の確認
- 地盤の確認
- 車検
運搬道路の確認
巨大なトレーラーハウスを田んぼまで運ぶ際、そこまでに至る道路がある程度広くないと、運搬することができません。農地にトレーラーハウスを設置する場合は、狭い道を通る必要があることも多いです。事前にトレーラーハウスがどのルートを通って運ぶことができるか、確認しておきましょう。
地盤の確認
トレーラーハウスを田んぼに設置しても、畑の土ではその重量に耐えられず、地面が沈んでいってしまいます。トレーラーハウス下は砂利やコンクリートで補強することが必要になるでしょう。
車検
トレーラーハウスは車両扱いなので、車検を取る必要があります。車庫証明のための土地所有者と使用者やルールについても明確にしておきましょう。具体的には、自動車の使用の本拠の位置(個人の場合は自宅、法人の場合は事務所の所在地)から保管場所まで、直線距離2km以内でなければなりません。
また、車検の度に動くかどうかの確認作業が入ってくるので、トレーラーハウスを動かせる空間も田んぼ内に求められます。トレーラーハウスの車検の度に畝を壊すことがないよう、作付計画のときから考えておく必要があるでしょう。
様々なメリットが得られるトレーラーハウスという選択肢
農地にトレーラーハウスを設置する場合、様々なメリットがありますが設置する場所によっては複雑な手続きを経る必要があります。農業委員会に確認したり、自治体に申請書を提出したりなど、やることは少なくないため、行政書士等の専門家を頼ることも検討しましょう。
また、トレーラーハウスの導入を決めた際には、HCTトレーラーハウスに是非お気軽にご相談ください。法令上クリアな方法で、デザインから施工完了までサポートいたします。
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