自宅でパン屋を開業したい方必見!開業に必要な準備や自宅開業の注意点など解説

近年、自宅での働き方が多様化する中、「パン作りを仕事にしたい」「地域に愛される小さなパン屋を始めたい」と考える方が増えています。特に、子育てや介護などで外に出にくい状況でも、自宅で開業できるスタイルは魅力的な選択肢のひとつです。
とはいえ、自宅でパン屋を始めるには、保健所の許可や施設の設備条件など、事前にクリアすべきハードルがいくつかあります。
そこで今回は、自宅でパン屋を開業する方法や必要な許可、注意点についてわかりやすく解説します。また、最近注目されている「トレーラーハウス」を活用したスタイルについてもご紹介しているので、あわせてチェックしてください
Contents
自宅でパン屋を開業する方法

「自宅でのパン屋開業」と一口に言っても、その実現方法は多岐にわたります。まずは、代表的な以下3種類の開業方法を紹介します。
- 自宅のキッチンを共用する
- 自宅の一部を改造・リフォームする
- 自宅の敷地に「離れ」や「別棟」を新築・増築する
1. 自宅のキッチンを共用する
自宅のキッチンを利用してパンを製造・販売する方法は、最も手軽に感じられるかもしれません。
しかし、実際には「菓子製造業許可」を取得するための基準が非常に厳しく、生活用キッチンとの兼用は原則として認められていない自治体が多いのが現状です。
たとえば、以下のような設備や構造が求められます。
- 生活スペースと完全に区画(分離)された製造スペース
- 専用の手洗い場やシンク(2槽以上)
- 給湯・換気・冷蔵設備
- 清掃しやすい床・壁・天井素材
こうした基準を満たすには、自宅のキッチンをそのまま使用するだけでは難しいのが実情です。
2. 自宅の一部を改造・リフォームする
使っていない部屋やスペースを改装して、保健所の基準を満たすように設備や区画を整えれば、営業許可の取得が可能になります。
ただし、以下の点には注意が必要です。
- シンクや手洗い設備の設置には水道工事が必要
- 間取りや内装の仕様変更により費用がかさむ
- 工事中の騒音が生活に影響
- 建物の構造上、希望する場所に水回りを設けられないことも
初期費用はかかりますが、自宅の空きスペースを有効活用できるでしょう。
3. 自宅の敷地に「離れ」や「別棟」を新築・増築する
自宅の敷地に新しく工房を新築・増築できると、生活空間と業務空間を明確に分けられます。衛生管理やプライバシーの観点から理想的なスタイルといえるでしょう。
この方法であれば、営業許可に必要な施設基準を満たしやすくなります。設備面や構造面の設計も自由度が高く、用途に応じた間取りにすることが可能です。
ただし、初期費用として建築費が高額になるため、以下のような点には注意が必要です。
- 基礎工事を伴う場合、建築確認申請が必要になることがある
- 建築基準法や都市計画法による用途地域の制限に注意が必要
- 水道・電気・ガスなどのライフラインの整備が別途必要
- 建設費用が比較的高額になる傾向がある
建築が可能かどうか、どのような設備が必要かは、管轄の自治体や保健所と事前に相談して進めると安心です。
パン屋の開業に必要な許可と資格

パンの製造・販売事業を行うためには、法律に基づく許可と資格の取得が必須条件となります。スムーズに開業できるよう、必要な許可や資格を確認していきましょう。
食品衛生責任者
パン屋を開業する場合、施設ごとに必ず1名以上の「食品衛生責任者」を配置することが義務付けられています。
栄養士や調理師などの資格を持っている方は講習が免除される場合もありますが、資格がない場合でも各自治体の食品衛生協会などが実施する食品衛生責任者養成講習会(通常1日)を受講することで取得可能です。
比較的取得しやすい資格なので、開業準備と並行して早めに取得しておくことをおすすめします。
菓子製造業許可・飲食店営業許可
自宅で焼いたパンを販売する場合、基本的には「菓子製造業」の営業許可が必要です。
店舗内にイートインスペースを設けて飲食を提供する場合は、別途「飲食店営業許可」が必要になるケースもあります。開業スタイルに応じて、あらかじめ保健所に相談しておきましょう。
保健所が定める「施設基準」
菓子製造業許可を取得するには、工房が保健所の定める「施設基準」を満たしている必要があります。主な基準は以下の通りです。
- 工房と生活空間が壁やドアで完全に分かれている
- 専用の手洗い場を設置
- 食品用と器具用のシンクを分ける
- 十分な換気・照明・給湯設備がある
- 床・壁・天井が清掃しやすい素材で仕上げられている
- 防虫・防鼠対策、器具・原材料の保管スペースの確保
これらの基準は各自治体で細かく規定されているため、事前に確認のうえ、図面や仕様書を用意して相談することが大切です。
パン屋を自宅で開業する際のデメリット・注意点

自宅での開業は柔軟性があり、ライフスタイルに合わせやすい反面、いくつかの注意点や課題も存在します。ここでは、開業前に知っておきたい主なポイントをまとめました。
1. プライバシーと生活の境界が曖昧になる
自宅の一部を店舗として使用する場合、業務とプライベートの切り替えが難しくなることがあります。以下のデメリットが生じる可能性があるので注意が必要です。
- 営業時間外や休日に来客対応が発生する可能性がある
- 業務とプライベートの切り替えが難しくなる
- 家族の生活リズムに影響が出る
2. 「建築基準法」と「都市計画法」の制約
自宅をリフォーム・増築してパン屋として営業する場合、建築基準法や都市計画法などの規制も確認する必要があります。とくに「用途地域」によっては、店舗の設置自体が難しいケースもあります。事前に自治体で確認しておきましょう。
- 第一種低層住居専用地域では、原則として店舗(パン屋を含む)の建築・営業は認められない
- 第二種低層住居専用地域では、小規模な店舗しか建築・営業は認められない
自宅が第一種低層住居専用地域に含まれている場合、どれだけ費用をかけてリフォームを計画しても、パン屋として開業できません。
3.初期費用や原状回復のリスク
リフォームや新築を伴う場合、一度着手すると元に戻すのが難しくなることがあります。開業後に事情が変わった場合でも、設備を撤去するには再度費用がかかる可能性があるため、慎重に計画することが重要です。
パン屋の開業ならトレーラーハウスがおすすめ

自宅開業に伴う課題に対する解決策の一つが、トレーラーハウスを活用する方法です。自宅の敷地内にパン工房の設備を完備したトレーラーハウスを設置することで、生活空間とは完全に分離された離れの工房として活用できます。
トレーラーハウスが「建築物」に該当しない条件とは?
トレーラーハウスを活用する最大のポイントは、「建築物」として扱われない可能性がある点です。建築基準法では「土地に定着する工作物」が建築物とされていますが、以下の条件を満たす場合、トレーラーハウスは車両として扱われることがあります。
- 車輪が機能し、公道へ移動できる経路が確保されている
- 地面への固定を行わない
- 電気・ガス・水道などの接続が工具なしで着脱できる
ただし、判断は自治体ごとに異なるため、設置前に必ず建築指導課などの担当部署に確認しましょう。
建築基準法の「用途地域」の制約を受けにくい
設置するトレーラーハウスが「建築物ではない」と判断されれば、都市計画法の用途地域による制限を受けにくくなります。
たとえば、自宅が「第一種低層住居専用地域」にあっても、パン工房を設置できる可能性が拓かれます。自宅のリフォームや増築では法的に不可能であったことが、トレーラーハウスによって実現できる可能性があるのです。
保健所の「菓子製造業許可」は取得できるのか?
営業許可は、その施設が建築物かどうかではなく「施設が食品衛生法に適合しているか」によって判断されます。固定店舗型のキッチンカーと同様、トレーラーハウス内に必要な設備(シンク・手洗い・換気・内装など)を整えれば、「菓子製造業許可」の取得も可能です。
自宅と分けた工房を持ちたいが、新築や増改築のハードルが高いと感じている方にとって、トレーラーハウスは非常に理想的な選択肢といえるでしょう。
トレーラーハウスでパン屋を開業するメリット

トレーラーハウスを活用することにより、自宅開業のデメリットを解消し、以下5つのメリットが期待できます。
- プライバシーの完全な分離
- 工期の大幅な短縮とコスト
- 将来の「移設・売却」という柔軟性
- ライフラインの確保も柔軟に対応可能
- 固定資産税の取り扱い
1. プライバシーの完全な分離
母屋(自宅)と工房(トレーラーハウス)が物理的に分離されるため、業務空間と生活空間を明確に分けられます。顧客や業者の出入りも工房側で完結し、家族は母屋で日常生活を維持できます。
また、事業主自身も工房から離れることで、精神的なオン・オフの切り替えがしやすくなります。
2. 工期の大幅な短縮とコスト
新築や増改築と比べて工期が大幅に短縮されるのが特徴です。
トレーラーハウスは工場で製造された上で搬入・設置されるため、現地での工事は最小限です。基礎工事も不要なケースが多く、トータルコストを抑えることが可能です。
3. 将来の「移設・売却」という柔軟性
トレーラーハウスは「動産(車両)」として扱われるため、必要に応じて別の場所へ移動することができます。事業が拡大した際の移転や、事業を終了する場合でも建物の解体費用が不要で、中古市場での売却や別用途への転用も可能です。
初期投資のリスクヘッジにもつながります。
4. ライフラインの確保も柔軟に対応可能
設置場所の状況に応じて、電気・水道・ガスなどの接続方法を選べます。
- 母屋(自宅)の電気メーターや給排水管から分岐して接続
- トレーラーハウス側に給排水タンクを設置
- プロパンガスでの対応
5. 固定資産税の取り扱い
トレーラーハウスは原則として「建築物」ではないため、固定資産税の課税対象外となる可能性があります。ランニングコストの軽減できる可能性があるのは、大きな利点と言えます。ただし、設置方法によっては課税対象になる場合もあるため、自治体への確認が必要です。
パン屋の事業用設備(オーブン、冷蔵庫等)は、償却資産としての税務申告が必要となるケースがあるため、税理士への相談をおすすめします。
トレーラーハウス開業の注意点とデメリット

もちろん、トレーラーハウス開業にも導入前に留意すべき点が存在します。以下4つのデメリットを解説します。
- 広さとレイアウトの制約
- 設置場所と搬入経路の確保
- ライフラインの接続コスト
- 自治体・保健所との事前協議が必須
1. 広さとレイアウトの制約
トレーラーハウスは「車両」としての規格(幅2.5m、長さ12m、高さ3.8mなど)に基づいて製造されています。
大型の製パン用オーブンや複数の機材を導入する場合、スペースや床の耐荷重、作業動線などを考慮して、十分な設計検討が必要です。また、天井高や作業動線も、固定店舗と比較すると制約を受ける場合があります。
2. 設置場所と搬入経路の確保
トレーラーハウスの設置には、自宅敷地内に水平な設置スペースが必要であり、搬入経路も確保しておく必要があります。大型トラックやクレーン車が敷地内に入れるか、前面道路の幅や電線の位置などを事前にチェックしましょう。
3. ライフラインの接続コスト
母屋との距離が長い場合、電気・水道・ガスの接続にかかる延長工事費用が発生します。特に水回りの配管工事はコストがかかる場合があります。
4. 自治体・保健所との事前協議が必須
開業計画を進める前に、以下の機関に事前相談することが重要です。
- 自治体(建築指導課など)
- 保健所(食品衛生課など)
自治体には、「計画地にこの仕様のトレーラーハウスを設置し、パン屋を営業する計画が建築基準法上どのように扱われるか」を確認します。 保健所には、「そのトレーラーハウスの図面・設備仕様で菓子製造業許可の施設基準を満たすことが可能か」を相談します。
これらの相談を通じて、開業の可否を確認したうえで、契約や施工に進むのが望ましいです。
パン屋を開業して夢を叶えよう
パン屋の開業は、趣味やスキルを活かして自分らしい働き方を実現できます。しかし、自宅開業には設備や法律、生活との両立といったさまざまな課題があるのも事実です。
そのような中で、トレーラーハウスという新しいスタイルが注目を集めています。建築物に該当しない可能性があるため、用途地域の制限を回避できる場合もあり、母屋と分離された業務空間はプライバシーの確保にもつながります。
また、開業後の移設や売却といった柔軟な対応が可能な点も、トレーラーハウスならではの強みです。初期費用や運営コストを抑えながら、自分だけのパン屋を形にする手段として、非常に現実的かつ魅力的な選択肢といえるでしょう。
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