災害支援で注目が高まるトレーラーハウス!被災地でトレーラーハウスが活躍するワケ
日本は古くから自然災害が多い国として、様々な自然災害に見舞われてきました。その度に被災した人々は苦しい環境での生活を余儀なくされています。
そんな被災者の生活環境を少しでも改善するべく、近年被災地にはトレーラーハウスを利用した仮設住宅などがよく見られるようになりました。
今回は、自然災害によって被害を受けた被災地でトレーラーハウスがどのように活用されているのか、なぜトレーラーハウスが活躍しているのかを解説します。過去の大きな災害でトレーラーハウスが活用された例も併せて紹介するので、最後までご覧ください。
Contents
被災地でのトレーラーハウスの活用方法
トレーラーハウスは、被災地で以下のように活用することができます。
- 被災者の仮設住宅
- 支援者の活動拠点
- 避難場所の仮設トイレ
- 簡易診療所
被災者の仮設住宅
多数のメディアでも報道されていることからご存知の方も多いと思いますが、被災者の仮設住宅としてトレーラーハウスが活用される事例が増えています。地震や水害によって自宅が倒壊し、住む場所を失う人々は避難施設での生活を余儀なくされます。
しかし、避難施設は一般的に近隣にある学校の体育館などで、多くの避難者と共同生活をしなければなりません。プライベートがなく落ち着いて生活できないという方がほとんどで、心が休まる場所がないと感じる方もいるようです。
そこで、被災者へ仮設住宅を提供することが求められます。これまでは、プレハブやコンテナハウスのような仮設住宅が主流でしたが、輸送や荷役作業に時間がかかることが課題として挙げられています。そこで注目を浴びたのがトレーラーハウスです。
トレーラーハウスは自走することはできませんが、車輪がついているため輸送が容易で荷役作業が必要ありません。ライフラインを接続することも可能で、室内にはシャワーやトイレ、キッチンなど生活に必要なものは全て揃っています。
このようなことから、被災者の仮設住宅としてトレーラーハウスが活用される事例が増えてきているのです。
支援者の活動拠点
被災地に遠方から支援者が赴いた際は、活動拠点が必要になります。しかし、被災地に都合の良い建物がなければ活動拠点を設けることができません。
そこで、被災者の仮設住宅同様に支援者に対しても活動拠点としてトレーラーハウスを提供することがあります。少しでも早く復興を目指す被災地にとっては、多くの支援者の力が必要になります。支援者の方が精力的に活動できるように、しっかりとした活動拠点を整備することが重要です。
避難場所の仮設トイレ
地域の体育館などの避難場所には、多くの被災者が避難してきます。しかし、そのような避難場所でもトイレの数には限りがあります。トイレが常に混みあっていると落ち着いて生活することができず、ストレスが溜まってくるでしょう。
そこで、屋外に簡易トイレを設置することがあります。その簡易トイレにトレーラーハウスが活用される事例も。「簡易トイレは衛生面が気になる」「狭くて使うのが大変」という声が挙げられる中、トレーラーハウス型の簡易トイレは水洗式で室内も広くて清潔なので安心して利用することができます。
簡易診療所
被災者の中には、持病があったり災害によってケガを負ってしまった方もいます。ウイルス性の感染症を患っている方が避難者の中にいれば、避難場所でクラスターが発生する可能性もあるでしょう。しかし、災害によって移動手段が無かったり道路が塞がってしまったりして、病院に行くことができないという状況が起こります。
このような場合、避難場所に医療団体が赴き、診察や治療を行うことがあります。そこで、避難場所に設置する簡易診療所としてトレーラーハウスが活用されます。簡易診療所を設置することで、感染症に罹っている患者を隔離することが可能です。
災害支援にトレーラーハウスが最適な理由
被災地でトレーラーハウスが様々な活躍をしていることはわかりましたが、なぜ数ある選択肢の中でトレーラーハウスが注目を集めているのでしょうか。トレーラーハウスが災害支援に最適な理由は、主に以下の3つが挙げられます。
- 設置・撤去が容易である
- 一般住宅と遜色ない暮らしができる
- 耐震性が高い
設置・撤去が容易である
被災者の仮設住宅や支援者の活動拠点には、トレーラーハウスの他にもプレハブやコンテナハウスなどの選択肢が挙げられます。しかし、それらを設置・撤去するには輸送や荷役作業が発生し、費用と工数がかかってきます。
プレハブやコンテナハウスをトラックに積み込んで輸送しても、現地でトラックから降ろすという作業が発生し、またクレーンなどを使わなければなりません。しかし、トレーラーハウスは自走することはできないものの、車輪がついているのでけん引するだけで容易に移動することが可能です。
一般住宅と遜色ない暮らしができる
トレーラーハウスはプレハブやコンテナハウス同様、簡素な造りであるというイメージがある方もいると思います。しかし、実際は一般的な住宅と同等の性能を有し、快適な生活を送ることが可能です。
電気・ガス・水道といったライフラインを接続できるため、お風呂やトイレ、キッチンを室内に設けることが可能で、構造も丈夫なので断熱性・防音性も問題ありません。マンションの1室のような居住空間が確保できるため、被災者の方に安心して住んでいただくことができます。
耐震性が高い
トレーラーハウスは住居部分と地面の間にシャーシがあり、地面から伝わる振動が吸収されるため耐震性が高く地震に強いです。また、輸送する際に発生する振動にも耐えられるように造られています。
地震によって被災した地域では、その後の余震によってまた被害を受けることが想定されるため、仮設住宅とはいえある程度の耐震性は必須です。トレーラーハウスは高い耐震性があるため、被災者の仮設住宅や支援者の活動拠点として適しているのです。
トレーラーハウスが活用された過去の例
それでは、過去の自然災害で実際にトレーラーハウスが活用された事例をいくつかご紹介します。
阪神・淡路大震災(1995年1月)
淡路島北部を震源とする、マグニチュード7.3、最大震度7を記録した阪神淡路大震災。近畿圏の広範囲で大きな被害が発生し、犠牲者6,434人にも達した大震災で、日本国内のみならず世界中に衝撃を与えた震災として今でも人々の記憶に深く残っているでしょう。
阪神・淡路大震災で被災した地域で、トレーラーハウスが簡易診療所や集会所、仮設店舗として活用されました。
東日本大震災(2011年3月)
日本国内観測史上最大規模、1900年以降世界で4番目に大きい地震として、10年以上経った今でも皆さんの記憶に新しい東日本大震災。マグニチュード9.0、最大震度7を記録し、東北地方を中心に12の都道府県で2万2,318名の死者・行方不明者が発生しました。
被害が広範囲に及んだことから、多くの被災者に仮設住宅を提供することが求められ、様々な地域でトレーラーハウスが活用されました。仮設住宅としてはもちろん、仮設店舗や仮設デイケアセンター、宿泊施設など、店舗や事業所を失った人々にとってもトレーラーハウスの存在は欠かせませんでした。
東日本大震災の前は、大型のトレーラーハウスは運行の安全を確保するため、道路交通法などで様々な制限がありました。しかし、店舗や事務所など公的な施設として利用したいとの要望が数多く出されるようになり、ついに2012年12月27日、道路交通法を一部改正し、一般道路を走行するための申請ができる自動車(特殊車両)として認めたのです。
熊本地震(2016年4月)
2016年、熊本県と大分県に相次いで発生した熊本地震。気象庁震度階級で最も大きい震度7を2回、震度6強を2回、震度6弱が3回発生した一連の地震活動の総称で、死者273人を出した大地震です。
この地震で最も被害を受けたとされる熊本県上益城郡益城町が、福祉避難所として日本で初めて公式にトレーラーハウスの導入を決断しました。国の支援対象となる福祉避難所として初めて公的にトレーラーハウスが導入されたことで、画期的な被災地支援策が実施されたとして一躍注目を集めました。
西日本豪雨(2018年6月)
2018年7月、中国地方を中心とした西日本の上空に4日間も梅雨前線が停滞し、そこに大量の水蒸気が流れ込んだことで発生した西日本豪雨。広島県、岡山県を中心に河川の氾濫や土砂災害等が発生し、死者・行方不明者245人を出した豪雨で、「平成最悪の水害」と称されるほど甚大な被害を出しました。
住宅8,000棟以上が全半壊し、家屋の風水害としては戦後最大の惨事となったこともあり、皆さんの記憶にも新しいと思います。この災害で大きな被害を受けた岡山県倉敷市に借上型の仮設住宅としてトレーラーハウスが導入されました。
借上型の仮設住宅としてトレーラーハウスが導入されたのは日本初の出来事で、被災地支援の歴史の大きな転換であるといわれています。
能登半島地震(2024年1月)
2024年の元日に発生し、多くの人々に衝撃を与えた能登半島地震。マグニチュード7.6、最大震度7を記録した他、過去の大震災と比較しても多数の余震が発生し、2024年2月16日時点で241名の死者を出した大地震です。
過去の災害を教訓に、様々な団体や事業者が被災地に向けてトレーラーハウスを無償で派遣し、この活動がメディアで数多く取り上げられました。この様子を受けて、日本の災害支援の現場にはすでにトレーラーハウスは欠かせない存在となっていることを、実感した方も多くいるかと思います。トレーラーハウス先進国であるアメリカではすでにこのような取り組みが当たり前となっており、日本の未来の姿といえるかもしれません。
災害支援にトレーラーハウスを活用する今後の課題
これまで様々な災害で活躍してきたトレーラーハウスですが、今後も災害支援策として普及するためには、次のような課題を抱えています。
- 早急なライフラインの接続
- 受け入れ体制の整備
- 災害支援に必要な要件の明確化
早急なライフラインの接続
西日本豪雨の際、トレーラーハウスが被災地に運び込まれてから実際に使えるようになるまでおよそ1ヵ月がかかりました。そもそも災害によって電気や水道のライフラインが断たれてしまっては復旧するまで使うことはできません。
さらに、ライフラインを繋げる工事は自治体の指揮の下で行われるため、迅速な対応が難しく時間がかかることも。一刻でも早くトレーラーハウスを使える状態にするためには、早急にライフラインを接続する術を確立しておかなければなりません。
受け入れ体制の整備
被災した地域がトレーラーハウスを受け入れる体制が整っていなければ、例え提供する団体や事業者が現れても迅速に導入することができません。上記のようなライフラインの接続だけでなく、設置する土地の準備や整地を進める必要があります。
さらに、仮設住宅として導入できる戸数には限りがあるため、どのように入居者を選定するかを決めておくことも大切です。多くの人はプライバシーが確保された個室で生活を送りたいと考えているはずですが、実際は全ての被災者に対してトレーラーハウスを提供できるわけではありません。
各自治体には、トレーラーハウスを受け入れる体制を早急に整備することが求められます。
災害支援に必要な要件の明確化
近年、日本でもトレーラーハウスが普及していることから、トレーラーハウスの製造・販売業者も増えています。しかし、中には被災地支援には適していないような仕様のものもあり、それらを被災地支援のトレーラーハウスとして提供することは望ましくありません。
被災地へ赴くので、ある程度の安全性能に加え、団地のように1ヵ所に複数台が集められることから防音性などの性能も求められます。被災者が少しでも安心して生活が送れるようにするためには、被災地支援に必要な要件を明確にし、その要件を満たすトレーラーハウスを提供しなければなりません。
災害支援にトレーラーハウスの活用を
トレーラーハウスが災害時にどのように活用されるのか、過去の事例なども交えて解説しました。
日本はこれまで多くの自然災害に見舞われ、その度に多くの人々が住む場所を失ってきました。そして、今後も日本では多くの自然災害が発生するでしょう。その時に、少しでも多くの被災者を支援できるようにするため、トレーラーハウスが今抱えている課題を解決していかなければなりません。
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