オフグリッドトレーラーハウスとは?電力を自給自足する次世代の常識に迫る
近年、環境問題への対策や自然災害への備えとして、オフグリッドという生活様式を選ぶ人が増えています。日本でも、東日本大震災をきっかけにオフグリッド生活に挑戦する人が増えました。
オフグリッドといえば、一般的な住宅で導入されることをイメージする方が多いと思いますが、トレーラーハウスでも実現することが可能です。
今回は、オフグリッドトレーラーハウスのメリットやデメリット、注意点などについて詳しく解説します。オフグリッドトレーラーハウスの活用が適しているシーンについても紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。
Contents
そもそもオフグリッドとは?
オフグリッドとは、電力やガス、水道などの生活に必要なライフラインを、公共のインフラに頼らず自給自足できるように設計された建物や生活の状態のことです。一般的には、電力会社から電力の供給を受けるための送電網「グリッド」と繋がっていない状態(オフ)を意味することが多いです。
太陽光や風力、地熱などの自然エネルギーを利用して電力を生み出し、環境に負担をかけないため、世界中から注目を集めている画期的なシステムです。住宅のオフグリッド化は一般的に馴染みがあると思いますが、道路の電光掲示板や電灯などにも利用されることが増えています。
特に近年は、SDGsの推進やエネルギー費高騰の影響を受け、ますます自然エネルギーの活用が重要だとされています。そのため、今後様々なシーンでオフグリッドの住宅や設備が導入されていくでしょう。
オフグリッドトレーラーハウスとは?
オフグリッドトレーラーハウスとは、上記で説明したように電力やガス、水道などを公共のインフラに頼らず独立している(オフグリッド)状態のトレーラーハウスです。通常、トレーラーハウスは一般的な住宅同様に公共のライフラインと接続することが可能ですが、様々な理由でオフグリッド化しているトレーラーハウスも存在します。
一般的なオフグリッドトレーラーハウスには、以下のような特徴があります。
- 太陽光パネルと蓄電池を設置している
- ガスコンロやガス給湯器は使用しない
- バイオトイレを設置している
- 太陽熱温水器を搭載している
太陽光パネルと蓄電池を設置している
オフグリッドトレーラーハウスでは、電力を自給自足するため太陽光パネルを搭載し、太陽光によって電力を生み出しています。そして、夜間や太陽光が足りない時でも電力を使えるようにするために、生み出した電力を蓄える蓄電池も同時に備えることが一般的です。
完全なオフグリッドを実現することができれば、電力を買う必要がないため電気代が一切かかりません。
ガスコンロやガス給湯器は使用しない
オフグリッドトレーラーハウスでは、あらゆるエネルギーを自然エネルギーを利用して生み出した電力に頼ることが一般的なので、ガスを使う生活機器を備えていません。いわゆる「オール電化」の状態です。
そのため、コンロはガスではなくIHを、給湯器もガスではなく電気や太陽熱を利用する設備を搭載しています。
バイオトイレを設置している
電力を自給自足していれば、オフグリッドトレーラーハウスと呼ぶことはできますが、環境に徹底的に配慮するとなれば、水道も公共のインフラから独立させることが理想的です。そこで、水を使わず微生物の働きによって排せつ物を分解・処理することができるバイオトイレを設置しているオフグリッドトレーラーハウスもあります。
処理槽内におがくずが敷き詰められており、適切な温度管理をしながら攪拌することで微生物の活動が活性化され、素早く分解することが可能です。トイレ特有の悪臭がほとんど発生しないため、水で流さなくても快適なトイレ環境を維持することができます。
太陽熱温水器を搭載している
太陽のエネルギーは電力だけでなく、水を温めることにも活用することが可能です。
太陽熱温水器を設置していなくても、電気式の給湯器を使えば水を温めることはできますが、それでは電力を余計に消費してしまいます。そのため、太陽熱温水器を設置して水を温め、シャワーなどに利用するオフグリッドトレーラーハウスも存在します。
オフグリッドトレーラーハウスのメリット
オフグリッドトレーラーハウスを導入することには、主に以下のようなメリットがあります。
- 環境に配慮した住まいを実現できる
- 水道・光熱費を節約できる
- ライフラインが整っていない土地にも設置できる
- 停電の影響を受けない
環境に配慮した住まいを実現できる
オフグリッドトレーラーハウスを導入することで、環境に優しい暮らしをすることができます。
日本の電力の70%以上は、石油や石炭などの化石燃料を利用した火力発電が占めており、発電する過程で多くの二酸化炭素を排出しています。二酸化炭素は地球温暖化の原因であるとされており、このまま増え続ければさらに温暖化が加速してしまうでしょう。
しかし、オフグリッドによって自然エネルギーで電力を賄うことができれば、発電する過程で二酸化炭素を排出しません。限りある資源を消費することもないため、環境に配慮した住まいを実現することができるでしょう。
水道・光熱費を節約できる
公共のライフラインから供給される電力や水道を利用すれば、当然その分の料金を支払わなければなりません。しかし、オフグリッド状態であれば公共のライフラインから独立しているため、利用料金が発生しません。
公共のライフラインに頼っていれば、社会情勢や経済状況などに左右されて価格が高騰する可能性もあります。電力を自給自足していれば、そのような影響を受けることもほとんどないでしょう。
ライフラインが整っていない土地にも設置できる
トレーラーハウスは建築物ではなく、車両に分類されるため、一般的には建物を建てることができない土地であっても設置することが可能です。しかし、そのような場所は公共インフラの整備が進んでおらず、電力や水道の供給が難しい場合もあります。
オフグリッドトレーラーハウスであれば、公共インフラに頼る必要がないため、ライフラインが整っていない土地にも問題なく設置できます。土地選択の幅が広がるので、理想のロケーションを実現することができるでしょう。
停電の影響を受けない
日本は自然災害の多い国で、強風や大雨、地震などの自然災害により度々停電が発生してしまいます。停電してしまうと、復旧するまで電気を使えなくなるため生活に様々な支障をきたしてしまうでしょう。
しかし、オフグリッドトレーラーハウスであれば、電力を自給自足しているため停電の影響を受けることがありません。近年は、その特性を活かして震災で被害に遭った地域の仮設住宅に、オフグリッドトレーラーハウスが導入されるケースも増えています。
オフグリッドトレーラーハウスのデメリット
多くのメリットがあるオフグリッドトレーラーハウスですが、以下のようなデメリットも存在します。
- オフグリッド化に高額な初期投資が必要になる
- 天候によって使用できる電力量が変動する
- 設備のメンテナンス費用がかかる
オフグリッド化に高額な初期投資が必要になる
オフグリッドを実現するためには、様々な設備を導入する必要があり、その初期費用が高額になることが大きなデメリットとして挙げられます。実際に、導入を検討していたものの、諦めてしまった人の多くは初期費用が思ったよりも高額であるために購入を断念しているようです。
初期投資以上のリターンが確実に見込めるのであれば導入する人も増えるかと思いますが、その保証がなく採算が取れないのではないかという疑念は払拭することが難しいです。設備の耐久性や効率などの技術的な課題がまだまだ多くある中で、高額な費用を投じてまでオフグリッドを実現したいと思う人は、まだそれほど多くないのが現実です。
天候によって使用できる電力量が変動する
太陽光エネルギーで発電するということは、天候によって発電できる電力量が左右されるということになります。日本は梅雨や台風など、雨天が続く時期もあるため太陽光発電だけで完全にオフグリッドを実現できるのか不安に思う方も多いでしょう。
事実、完全なオフグリッドを実現することが難しいとされており、それを実現するためにはまだまだ多くの課題が残されています。電力に余裕がない状態では、ゆとりのある生活を送ることができなくなるでしょう。
設備のメンテナンス費用がかかる
オフグリッド化に必要な設備は定期的なメンテナンスが欠かせません。メンテナンスを実施していないと、性能が落ちていることに気付かなかったり、いきなり故障を起こしたりする恐れがあります。
性能が落ちていることに気付かなければ本来発電できる量の電力を発電できず、電力量が不足してしまうことが考えられます。突然故障を起こせば、修理や交換が完了するまでの間は電気が使えない生活を送らなければならないかもしれません。
多額の費用を投じて設置した設備を長期間使い続けるためには、適切なメンテナンスを実施する必要があり、その度にメンテナンス費が発生します。導入する際は、メンテナンス費がかかることも計算して検討しなければなりません。
オフグリッドトレーラーハウスの活用が適しているシーン
様々な活用方法があるトレーラーハウスですが、特に以下のシーンではオフグリッドトレーラーハウスの活用が適しているといえます。
- 災害時の仮設住宅として
- 移動式の宿泊施設として
- ライフラインが届かない土地の住宅として
上記のシーンはいずれも、ライフラインを速やかに接続することが難しい状態です。そのような場合でもトレーラーハウスで問題なく生活するためには、オフグリッド化してエネルギーを自給自足することが解決策として挙げられます。
オフグリッド化することで、トレーラーハウスの活用方法はさらに幅が広がり、常識やこれまでの概念に囚われずに活用できるようになるでしょう。
オフグリッドトレーラーハウスを導入する際の注意点
オフグリッドトレーラーハウスを導入する際は、以下の注意点を十分理解してから検討しましょう。
- 電力量の多い家電の使用は避ける
- 設置する土地の気候の特性を理解する
- もしもの時に備えておく
電力量の多い家電の使用は避ける
電力を自給自足しなければならないため、生活に使う電化製品はできるだけ最低限かつ省電力のものを選びましょう。電力量を多く消費する家電を使えば、自給自足した電力をすぐに使い切ってしまい電力不足を引き起こしてしまう可能性があります。
特に空調機器には配慮が必要で、一般的な家庭ではエアコンが最も多くの電力を消費するといわれています。なるべく空調機器に頼らなくても快適な温度にできるように断熱性の高い構造にするなど、様々な工夫が必要です。
設置する土地の気候の特性を理解する
太陽光発電は、設置する土地の気候条件によって生み出すことができる電力量が左右されます。晴天日数が多い土地の方が、雨天が多い土地よりも日照時間が長くなるため、発電できる時間が長くなり、より多く発電できるでしょう。
また、台風が直撃しやすい地域や海沿いの地域もオフグリッドにはあまり適さないといわれています。台風が直撃すれば強風により太陽光パネルなどの発電設備が大きなダメージを負い、海側の地域では潮風により蓄電池などの機器が塩害を受けることで、設備の寿命が縮まるでしょう。
オフグリッド化に適していない気候条件をしっかり調べてから、検討することをおすすめします。
もしもの時に備えておく
オフグリッド化に適している土地にトレーラーハウスを設置したとしても、絶対に電力不足に陥らないとは限りません。悪天候が続いたり、機器が故障したりして発電できないリスクは十分に考えられます。
そのため、非常用バッテリーを持っておく、太陽光発電機だけでなくディーゼル発電機も備えておくなど、最悪の事態を想定して事前の準備をしておきましょう。
オフグリッドトレーラーハウスで環境に優しい暮らしを
オフグリッドトレーラーハウスについて、詳しく解説しました。。
トレーラーハウスをオフグリッド化することには、環境に配慮した暮らしが実現できたり、活用方法や土地選択の幅が広がったりと様々なメリットがあります。しかし、初期投資金額が高額になり、そのうえ定期的なメンテナンスでランニングコストもかかるといったデメリットも存在します。
オフグリッド化する際は、目的や採算性を慎重に検討してから導入するようにしましょう。
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